第8回 国際 建設・測量展(CSPI-EXPO2026) 出展資料請求 [無料] 会期 2026年 6月 17日(水)・ 18日(木)・ 19日(金)・ 20日(土) 会場 幕張メッセ

  • 会期 2026年6月17日(水)・18日(木)・19日(金)・20日(土)
    10:00〜17:00(最終日20日のみ16:00まで)
  • 会場 幕張メッセアクセス
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地域建設業の技術は世界で通用
/経験値と語学力の融合で現場管理
/短期集中で専門用語を習得し、仕事に生かす

  • ツクルロマン代表取締役社長
  • 関根 謙太

高度な技術力を誇る日本の建設業が世界を舞台に活躍することが期待されている。その時に〝英語〟が足かせになることのないよう、ツクルロマンでは建設業に特化した英語学習プログラム『オフィス留学』を提供している。「日本の地域建設業は世界に通用する技術がある。それには海外の人とコミュニケーションを取れる語学力が重要だ」と話す関根謙太社長に、地域建設業が海外展開する上で英語を学ぶ価値やポイントを聞いた。

地域建設業の海外への関心は

行政によるリスキリングの補助が充実し、英語教育の費用の大部分を賄えるため、海外展開を検討する地域建設業や空調工事会社、ホームビルダーなどから当社への問い合わせが増えています。「受けきれないほどの受注は日本にあるが、こういうときだからこそ海外に仕事を広げたい」という思いを強く感じます。

建設業が海外展開する際の方法はさまざまですが、現地企業とのジョイントベンチャー(JV)やM&A(企業買収)に加え、ODA(政府開発援助)案件への参画、または自社が開発主体(デベロッパー)として現地に関わるなど、段階的に事業を広げていくケースも多くみられます。

M&Aにおいては、EBITDA(利払い前・税引き前・減価償却前利益)に一定の倍率(マルチプル)をかけた評価手法が用いられることが多く、建設業界では利益率が低い傾向があり、他業種に比べると買収価格が抑えられる傾向もあります。もっとも価格の妥当性は単なる利益倍率だけでは測れず、保有資産、案件パイプライン、現地での信用力といった定性的要素も大きく影響します。

一方、自社がデベロッパーとなるケースでは、数億円規模の初期投資で現地事業に参入する例もあります。例えば、日系金融機関を通じて現地の施工業者と接点を持ち、試験的に施工を発注しながら信頼できるパートナーであると判断できた段階で合弁会社の設立に至るケースもあります。

時差が少なく文化も近いアジアはインフラ需要が旺盛で、土木工事を受注するならFIDICに準拠する必要があります。トラブル発生時の対処法も契約書に細かく定められているため、FIDICを知り、働く人を確保できれば工事管理の質が高い日本企業は現地のゼネコンより優位性を発揮できるでしょう。

海外に出るときの準備は

スクリーニングは、主に経営コンサルタントが担当するケースが多いように感じます。全国ゼネコンはPwC、デロイトトーマツなど大手に頼みますが、大手出身の中小コンサルタントも活躍しています。インフラプロジェクトをとりにいくのか、民間建築など現地のマーケットに参加するのかで進出の仕方が変わるため、中小企業診断士も相談にするのもよいでしょう。

当然、失敗するリスクもあります。ある売上100億規模の会社がアジアに進出した時、技術は非常に高いのですが、契約や現地とのリレーションシップがうまくいかず撤退したケースがありました。せっかくチャレンジしても事業の方向性が明確にならす、契約まわりの実オペレーションを担当する人がいないと失敗しがちです。

FIDICを身につけるコツは、一条項ずつ全て理解することだと言われ、プロのコンサルタントも「条項の解釈を深め、それらを実行できれば、失敗することはない」と断言します。当社の英文テキストも土木の例文はほとんど契約に結びつけています。行政の工事では英語を話せる人が窓口になることが多いため、英語を話す必要があるでしょう。当社は土木向けの講座や、FIDICを読み解くためのサービスを開発しています。

海外で仕事をする際の語学の重要性は

これまでのゼネコンの海外進出を見ると「あいつならできるだろう」と属人的な判断で乗り切ろうとする傾向が強かったと感じます。ある大手ゼネコンは海外赴任する社員に求めるTOEICスコアが550ですが、総合商社では最低でも800を求めます。確かに、現場対応力や経験である程度は乗り切れることもありますが、語学力が低いと損失につながりやすいのが実情です。例えば英語の会議が雰囲気で「なんとかなった」としても、通常の日本語での会議と比べて倍以上の時間がかかっているようであれば、時間的コストでは「なんとかなっていない」といえます。

どの社員が海外の現地で業務を担うかも重要です。そのとき役立つのが全産業に共通する〝グローバル人材〟の定義で、仕事をやり遂げる「主体性・リーダーシップ」、経験工学の建設業に求められる「専門知識」、国際的コミュニケーション能力としての「語学力と異文化対応力」の三つがあります。リーダーシップと異文化対応力は関連性が高く、異文化を知ることは特に重要で、現地に入って信頼関係を築いた上でプロジェクトを始めれば万全です。建設を取り巻く環境と状況が分からないと、せっかくの技術力も生かせません。

英語の勉強法は、コミュニケーション能力と専門知識の二つに分けて考えると良いでしょう。多くの英会話スクールが教える英会話は流暢なコミュニケーションを鍛えるもので、時間がかかります。一方、仕事では専門分野の英語力があればなんとかなる面もあります。普段の仕事で使う単語のため、短期集中で3カ月もあれば覚えられます。

例えばインドの自動車工場の建て替え工事をケーススタディにした教材があるのですが、既存工場に通るガスパイプラインに触れないように施工する時、離隔距離をとらなければなりません。この離隔を「untouchable line」と訳します。掘削は「Open Cut」です。こうした単語はすぐに覚えられます。

現場経験の豊富な技術者なら、工期の遅れやトラブルに発展しそうなケースは経験則で危機察知能力が働きますが、対処法を現地の人に伝える手段は言語です。このことをきちんと理解することが重要です。

英語が話せることの意義や生産性向上の効果は

英語力によって、業務効率が数倍変わるケースもあると思います。日本語は短い言葉で情報を伝える言語と言われ、例えば一行の日本語を英語に直訳すると2行になります。ただ英語を知っている人はニュアンスをくみ取って1行にできます。そうすると生産性は2倍です。

自動翻訳機のレベルが上がり、海外展開のハードルは下がりました。ただ交渉や業務全てに対応できるわけではないため、英語力の強化は今なお不可欠です。そうした中、建設業界の課題として特に建設コンサルタントから聞くのは、国内の現場が減少する中で、若手が育ちにくい状況になり、その結果ベテランと若手が一緒に海外に出て技術継承するケースが増えているという点です。産業として日本の技術力や知見を残す上でも海外は重要だと思います。

日本企業の強みは技術力で、それは世界から高く評価されています。そして地域建設業をはじめとする中小企業も世界に通用する技術力があることは間違いありません。当社の事業コンセプトは海外展開のハードルを下げることであり、今後もさまざまな教材開発などを通じて支援したいと思います。

関根 謙太